1stアルバム『Yesterday And Today』発売記念 誰もしてくれないのでゴールデンシルバーズ勝手に12,000字インタビュー

ゴールデンシルバーズ

出会ってから24年。菅大智と奥山利徳のふたりは、いかにしてゴールデンシルバーズとなり、いかにして1stアルバム『Yesterday And Today』を完成させたのか?ふたりの歩みと現在の思いに迫るため、ロング・インタビューを敢行!今まで明かされなかった数々の秘話が白日の下に!?

Interview & Text by 竹内伸一 / Photo by rei

─ 最終回 創業24年、はじめてのフルアルバム ─『Yesterday And Today』完成!

──出会いから20数年、いろいろと形を変えながら一緒にやってきたおふたりの音楽が、ついにゴールデンシルバーズの1stアルバムとして形になりました。

そうですね、半分くらいは以前からやっている曲ですね。過去にCD-Rなどで発表した曲もあるんですけど、アルバムは全部新しく録ったものです。バンドのプロフィール的にも、一度、自分たちの曲をきちんとした形でまとめたいと思っていたんです。古いものから新しいものまでが入ったアルバムなので、『Yesterday And Today』というタイトルにしました。まあ、The Beatlesのパクリでもあるんですけど(笑)。あ、THE BAWDIESの1stアルバムも同じタイトルですね。彼らの力も借りておこう(笑)。彼らのことも意識して名づけたことにしておきます(笑)。

──最も古い曲は先ほども話に出た「スージーキューティー」ですか?

そうですね。僕らが24歳くらいの頃には出来ていました。アレンジは変わっていますけど。

もともとのイメージはブリティッシュ・ビート・バンドがやるソウル・ミュージックなんですよね。Small Facesの「Shake」とか、ああいう感じです。それがどんどん脱線していって、今の形に。

僕らがやるとロックになってしまうんですよね。結局ドラムがうるさいという(笑)。

例えば“ブリティッシュ・ビート・バンドがやるソウル・ミュージック”みたいにやりたいと思って曲を作るんですけど、改めて(インスピレーションを受けた)その曲を聴くと、そんなにうるさくない(笑)。でも、僕がイメージしている“ブリティッシュ・ビート・バンドがやるソウル・ミュージック”は「スージーキューティー」みたいにうるさい感じなんですよね。音楽を聴くときって、頭の中でイメージを増幅しているんでしょうね。

──逆に一番新しい曲は?

「ひるね」です。イメージはIMMEDIATE期のSmall Facesです。

わかりづらいよ(笑)。

そんなことないよ。

僕らの間では伝わるけど、一般的にはわからないよ。

──気になる人はSmall FacesがIMMEDIATE RECORDSからリリースした作品を聴いてくれということですね。

じゃあ、そういうことで(笑)。

──曲の話が出たので、他の曲についても一言ずつコメントしていただけますか? まずは1曲目の「悲しき残念賞」。これはGS風と言いますか……。

GS風でありマージー・ビートであり、ガレージ風でもあるという感じですね。タイトルはOrange Juiceから。こういう邦題の曲があるんですよ(編注:原題は「Consolation Prize」)。曲自体は全然Orange Juiceっぽくはないですけど(笑)。

僕の中ではThe Kinksのイメージ。最初に曲を聴いたときにそう感じたので、だったらサビのコーラスは「You Do Something To Me」っぽくしてみようと。というか、ほぼそのままなんですけど(笑)。ちなみにCメロはThe Zombiesっぽくしてみました(笑)。

歌詞については何も考えていません。

それ、どういうことよ(笑)。

曲に乗る言葉を使うようにしていて、内容は後付け。

こんな身近に桑田佳祐がいたとは!(笑)

──2曲目の「人喰い族」は、以前のバージョン(曲名:「土人」)では長いイントロがついていましたよね?

長いという意見が出たのでアルバムではカットしました。ライヴでは元の長いバージョンでやっています。

ライヴの持ち時間が足りないときはアルバム・バージョンでやります。便利になりました(笑)。

これはアフロ・ビートをイメージした曲なんです。アフロ・ビートはイントロが長いんで、それをやりたかった(笑)。

アフロ・ビートって本格的にやろうとすると管楽器やパーカッションが入ったりすると思うんですが、それを頑張って3人のロック・バンドで表現しています(笑)。ドラムは普通の4つ打ちですけどね。昨今4つ打ちが流行っているので売れるんじゃないでしょうか(笑)。

──途中でソロまわしが出てきたり、聴き応えのある曲ですね。

聴きどころはイチローくんのベース・ソロですね。カッコいいです!

──一番古いという「スージーキューティー」に続いて「オリハモウダミダ」。これはモータウン風ですね。

最初はピアノを入れようかと思ったんです。頭の中ではそういうイメージでした。

今回はあまりいろいろな楽器を入れずにシンプルにやろうというのがコンセプトとしてあったんです。なので、この曲もシンプルなアレンジになりました。個人的にはELOの「Mr. Blue Sky」みたいな感じにしたかったんですが、そうでもなくなりました(笑)

最初のイメージはThe Beatlesの「Martha My Dear」。それがどんどん脱線していった(笑)。もともとは僕のソロ、オ・ディドリーのレパートリーです。

──「Dr.スケベハカセの秘密の診療所」はロックオペラな展開が熱いです。

10年前くらいに出来た曲です。

結成して最初に出したCD「ドクター・スケベハカセ・クロニクル」に入っています。

テレサフォーのときからやっている「Dr.スケベはかせの不思議なお薬」という曲がありまして、そのCDでは、その曲とあと2曲を加えて4曲でオペラ風にしたんです。その中から1曲取り出して、録り直して入れました。最初と最後の鍵盤は僕が弾いています。

The Whoが好きなので“じゃあ、ロックオペラ”をやろうという、実に単純な発想です。一回やっておこうと(笑)。Pete Townshendのような深いメッセージ性はありません。よくよく考えてみると、歌詞の世界観が聖飢魔Ⅱの「蝋人形の館」と一緒でした(笑)。

そういえば、OKAMOTO’Sの新作もロックオペラとのことで、それに便乗したいですね(笑)。

──相乗効果でロックオペラ・ブームが来るかもしれませんね。5曲目の「シーマイソウル」は渋谷系という雰囲気ですね。

ゴールデンシルバーズになってから、自分史上で一番良い曲を作ったと思っています。気に入っています。“曲は自分の子供だから優劣はつけられない”という人もいますが、僕は断然つけますね(笑)。

これが一番良い子だと(笑)。

うん、コード進行が特に好き。世の中の作曲家のみなさんには稚拙で笑われるかもしれませんが、自分的には出来たときに“やった!”と思いました。The Style Councilなんかが最初のイメージですね。あ、この曲を作るときに一番影響受けたのは大阪でLosTailorsというバンドをやっている永野さん。こういう曲を作るのがすごく上手なんですよ。それで自分も作ってみたいと思って。

あんまり元ネタはバラさない方がいいんじゃないの(笑)。

他のミュージシャンの方は、こういうことをあまり明かさないんでしょうけど、僕はあえて言っていくという方向で(笑)。それに、この曲のあの部分をパクリましたというわけではなくて、イメージってことだから。

──The Style Councilってこんな感じだよね、The Whoってこんなイメージだよねってところから発想しているということですね?

そうです。

と言いつつ思い切り「You Do Something To Me」なんて挙げちゃいましたけど(笑)。そういうエッセンスを入れることはありますけど、曲全体として、例えば「You Really Got Me」のリフで曲を作ろうという発想ではないんですよ。

──あくまでもイメージを膨らませていくということですよね。「ヤンナッタ」は“生きているのがつらい”という思いをポップに歌うというすごい曲ですね。

“死ぬ勇気がないだけさ”ってね。軽快で後ろ向き(笑)。

本当にネガティヴな人だったら、こういう歌詞は出てこないと思いますよ。

サビの“ヘヘイ・ヘイ”もThe Style Councilのイメージだっけ?

いや「Satisfaction」とか、英国ロックによくある感じにしたかった。Spencer Davis Groupの「Keep On Running」とか。で、曲調はManfred Mannをイメージしました。

──「ひるね」はスロー・テンポでサイケデリックな曲ですね。

まあ、よくあるロックですよ。ハード・ロック前夜というか。

──「アブラアセ」も古い曲ですか?

そうですね。「人喰い族」を作って、アフロ・ビートをもっとやりたいなと思って作った曲です。

こちらは長いイントロもあります。最初のバージョンでは、中間部は打ち込みになっていました。途中でディスコに変わるというのをやってみたかったんです。特に意味はないんですけど(笑)。これでパラパラでも踊ってもらえたら御の字です。

自分たちでは“よっしゃ!”と思っていたんですけど、割と評判が悪くて。ライヴと違うって言われて。じゃあ、今回はライヴと同様にやってみようと。

──続いて「ロックンロール」。

僕たちの好きなあるバンドのベーシストが“ロックンロール!”って叫んで、マイクをバンッて投げつけるのを見たんです。なんて面白いんだと思って。じゃあ、それで1曲作ってみようと。

“ロックンロール”って言いたかっただけですね。曲自体はRamonesっぽいでしょうか。僕としては「ロックンロール」ということで、Led Zeppelinの有名なドラム・フレーズを端折って入れました(笑)。

──「ヒップス・アー・オールライト」は初期のThe Whoっぽい感じですね。

Bo Diddleyの「I’m Alright」に触発され、The Whoがやっているの「Shout And Shimmy」のようにアレンジした曲です。

彼はスケベなんで、そういう一面がよく出た曲だと思います。

それほどスケベではないと思うよ。“勃起”とか“チンポ”という言葉を使って曲を作っている人っていないなと思って、だったらやってみようと。

なぜ使わないかは、考えてみればわかると思うんですけど。僕はあんまり好きではないです(笑)。でも、歌詞は任せているので、口出しはしない。じゃあ、代わりになる言葉は?って言われても、ありませんし。

ダメって言われると、使ってみたくなるんだよ(笑)。まあ、歌詞はなんでもいいんですよ。歌に乗ればそれでいい。

──最後は「キーポンバーニン」。

これも古くて「スージーキューティー」の次に出来た曲です。

まあ、ハード・ロックですよね。もともとはThe Whoの『Live At Leeds』に入っている「Young Man Blues」みたいな曲をやりたかったんです。当時のThe Whoはハード・ロック色が強かったので、自然とこの曲もそういう感じになりました。で、ハード・ロックならばライト・ハンドとか入れたいなと。

──そういう発想から、メタルっぽいギター・ソロが出てくるわけですね。

僕は、メタルは一切聴かないんで、僕の考えたメタルですね(笑)。

最後はジャーマン・メタルよろしくツイン・ギターでハモッてもらいました(笑)。でも中間部はウッドストックな感じですよね。そこから急にメタルになる(笑)。

メロディはSmokey Robinsonの「Dancing’s Alright」をほぼそのまま(笑)。

でも演奏のおかげか、すごくハード・ロック感がある。僕はDeep Purpleなんかも聴いてきたし、イチローくんも好きなので、わりとDeep Purple感を出したりしています……出来ているかどうかはわからないですけど。まあ、イメージですね。

──という12曲で『Yesterday And Today』が完成しました。

我々が出会ってから24年間が詰まっているというか、24年続けてきたらこうなりましたという報告ですね。良い曲を聴いて感動をしたってことにはまずならないと思いますけど(笑)。

どの曲で感動するの(笑)。

聴いて“面白かった”と思ってもらえれば本望ですかね。感動するような曲は他の人に任せます(笑)。

ロックが好きな人ならば楽しんでもらえるんじゃないかな。そうだと嬉しいですね。僕はもともと友達がいないので、このアルバムをきっかけに友達ができたらいいですね(笑)。

僕らが知らないだけで、僕らと通じる音楽をやっているバンドもいるかもしれないし、そういう人達と出会うきっかけになるといいよね。全国で同じような音楽をやっていたら、ぜひ声をかけてください。ゴールデンシルバーズってどんなバンドって言われると、説明しづらいんですよ。ロックンロール・バンドであることは間違いないんですけど、それだけじゃないとも思う。手短に伝えられる言葉がなくて、僕はいつも“くだらないバンド”ですって言っちゃうんですけど、でも、そのくだらなさが自分としては好きなんですよね。

音がデカいんでガレージっぽいって言われるけど……言葉で表現するとそうなってしまうよね。だからまずはアルバムを聴いてもらいたい。

彦摩呂だったらどう形容してくれるんだろう?“ロックの宝石箱”かな?(笑)。いろんなロックの要素が詰まっているっていう意味で。

──では1stアルバムのキャッチフレーズは“ロックの宝石箱”ということで(笑)。それではもう残り時間がありませんので、存分に「サライ」を歌ってください!

ヤバい。適当な感じで締められた(笑)。みんなで「サライ」を歌いながら帰りましょう!

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ゴールデンシルバーズ

ゴールデンシルバズ

奥山 利徳(ギター&ボーカル)、菅 大智(ドラム&コーラス)による2人組のロックバンド。1977年、秋田県の南に位置するパンクロック発祥の街・デトロイトにて出生。
デトロイト中学(校歌がLAUGHIN’NOSEの「GET THE GLORY」)2年生の時に出会いバンドを結成。メンバーとバンド名を変え続けながら、以来二十数年経過。
2006年、クダラナさのあまり愛想を尽かされ遂にメンバーは2人だけとなりゴールデンシルバーズを名乗り始める。(ライブはサポートベーシストを交えての3人編成)
2012年から菅がドレスコーズに参加するためにゴールデンシルバーズは音楽活動を休止、楽器をグラスに持ち替え飲酒サークルとして都内を席巻する。2014年9月に菅がドレスコーズを脱退したため同12月24日にライブ活動を再開。

スージーキューティー Music Video

1st Album『Yesterday And Today』

Yesterday And Today

2015.10.21(wed) Release

redrec/sputniklab inc.

RCSP-0062 ¥2,400-(本体+税)

  • 【収録曲】
  • M-01. 悲しき残念賞
  • M-02. 人喰い族
  • M-03. スージーキューティー
  • M-04. オリワモウダミダ
  • M-05. Dr.スケベハカセの秘密の診療所
  • M-06. シーマイソウル
  • M-07. ヤンナッタ
  • M-08. ひるね
  • M-09. アブラアセ
  • M-10. ロックンロール
  • M-11. ヒップス・アー・オールライト
  • M-12. キーポンバーニン
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